コラム

笑顔のあるホームをつくるために

新年あけましておめでとうございます。新年はじめのコラムは、当法人のグループホームについてです。

当法人グループホームの基本方針の一つに『笑顔のあるホームをつくろう』が掲げられています。朝礼では、必ず法人の理念とともにグループホームの基本方針を唱和しており、それらを意識しながら日々業務に携わっております。生活の場において笑いや笑顔で過ごすことは明るく生き生きしたポジティブな印象をもつことでしょう。では利用者の方々を笑顔にするにはどのような働きかけをしていけばいいのか、このコラムでは「笑顔」に焦点を当てて笑顔の本質を探っていきたいと思います。どうぞ笑顔になるような出来事を思い出しながら、ご一読ください。

【目次】
1.はじめに
2.笑顔がもたらす効果
3.心理学面からの視点
4.まとめ

1.はじめに

突然ですが、皆さんは日頃からよく笑っていますか?私はどちらかといえばよく笑うタイプなのですが、コロナ禍でマスク生活が長期化している今、顔の半分以上をマスクで覆っているため表情が分かりにくいことも関係して笑顔が乏しくなったように感じます。皆さんのなかでも、コロナ禍で人と会う機会が減り以前より笑わなくなった人や笑顔自体意識せず過ごしている人もいるかと思います。化粧品メーカーのアテニアの調査によれば、子供は1日に約400回笑うのに対し、成人女性は平均13.3回ほどしか笑っていないそうで、笑っている1回の時間は推定30秒未満ということになります。さらに年代が40代、50代と上がるにつれ笑顔の回数が減少していることも検証されています。大人になると経験を積み重ねた分、子供のように素直に感情を表に出すことがだんだん難しくなっているのかもしれません。

2.笑顔がもたらす効果

では実際、笑顔でいるとどのような効果があるのでしょうか。笑顔については様々な研究をされており、近年では医療方面でも笑顔の研究がなされ、病気の予防や改善に役立つという結果報告もされています。笑顔がもたらす効果をいくつかご紹介したいと思います。

①免疫力がUPする:笑うとよく免疫力がUPすると聞いたことがあるかと思います。その過程は(ナチュラルキラー)細胞と呼ばれる自然免疫の一種が活性化され、がん細胞や微生物感染を抑える働きをします。また、IgA抗体という免疫物質の濃度が上昇し免疫力を高める効果もあります。免疫力を上げることで感染などに打ち勝つ力も備わってくることになります。
②自律神経の調和:自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、心と体を活発にする交感神経と、休ませる副交感神経で体のバランスを取っています。笑うことで副交感神経が優位になり、ストレスホルモンの分泌が減少され、リラックス効果を生み出します。
③幸福感が増す:笑うと脳内ホルモンのエンドルフィンという神経物質が放出され、幸福感が増すと言われています。イギリスの研究でも、笑顔一つでチョコレートバー2000個分の幸福感を味わうほどの脳内刺激を受ける効果があると発表されています。私もチョコレートなど甘いお菓子が大好きですが、利用者さんのなかでもお菓子を好まれている人が多い印象を受けます。笑顔だけでもチョコレートを食べた以上の幸福感が得られるのならとても健康的ですよね。また、エンドルフィンにはモルヒネと同等の効果もあるので痛みの緩和にも繋がります。
④脳の活性化:笑うと表情筋が働き、脳血流量が増加し、脳細胞への栄養補給が増加することで活性化されます。笑う人と笑わない人と比較すると笑わない人より笑う人のほうが認知症になりにくく長生きするという研究結果も出ています。

他にも、アンチエイジング効果など上げたらキリがありませんが、笑顔でいることは心身の健康にも直結していることが分かります。

3.心理学面からの視点

相手が笑っていると無意識につられて笑ってしまうことはありませんか?こういった現象をミラーリング効果ともいわれ、相手のしぐさや言動をミラーのように自然に真似することを意味します。この効果を活用することで相手との親近感や信頼感が生まれてくると言われていますが、利用者のなかには真似をされることで逆に不快に感じる方もいらっしゃいます。また、メラビアンの法則によると「言語情報7%」「聴覚情報38%」「視覚情報55%」という割合で、コミュニケーションに影響を与えていると言われています。例えば、笑いながら叱るような発言をしたら、相手にとっては「笑っている表情」を優先にしてしまうということです。

利用者の方達は感情にとても敏感にキャッチされるので、いつもと違う表情や言葉掛けの汲み取り違いで、場合によっては笑顔が悪影響を及ぼし「怒られた」「ばかにされた」という気持ちにさせてしまう可能性があります。心理学面上、有効な手段は数多くありますが、必ずしも当てはまるわけではないことを念頭に置いてしていかなくてはなりません。

4.まとめ

コロナウィルスの流行はまだ収まらない状況であり、利用者さん達にとって楽しみであろう、お出かけやイベントが制限され笑顔になる機会が幾分減っているように感じます。だからこそ、利用者の方達に笑顔を与えられるよう、まずは自分自身から笑顔になれる方法を見つけ、意識的に笑顔を作るよう心掛けていきたいと思います。そして個々でも笑顔になる数が増えれば笑顔の絶えないホームに育っていくとそう感じています。

参考ウェブサイト
・株式会社アテニア『Smile Switch Project』、2022
参考文献
・伊丹仁朗、笑いの健康学、三省堂、1998