コラム

改正障害者差別解消法と合理的配慮について

前回、当法人コラム(2021.12.8 セルフスタンドと障害者差別解消法)を掲載してから、およそ3年が経過しようとしています。その間の障害者差別解消法や合理的配慮の現状と今後の課題に加え、今年の4月に迫った改正障害者差別解消法は、民間事業者に合理的配慮が義務化されることを踏まえながら、当法人の運営するガソリンスタンドの取り組みを紹介させて頂きます。

【目次】
1.改正障害者差別解消法の内容
2.合理的配慮の現状と課題
3.ブルーミング阿倉川SSの取り組み
4.まとめ

1.改正障害者差別解消法の内容

まず障害者差別解消法とは、2021年6月4日差別解消法が改正されて、民間事業者の合理的配慮が義務化となり、3年以内に施行されることになりました。具体的な内容は、「障害による差別を解消し、誰もが分け隔てなく共生する社会の実現」を目的とし、2016年4月に施行され、「不当な差別的取り扱いの禁止」「合理的な配慮の提供」を求め、障害のある人もない人も共に暮らせる社会を目指していく為の法律です。
不当な差別的取り扱いの禁止とは、都道府県・市町村等の役所や会社・お店などの事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止しています。

「不当な差別的取り扱いの禁止」の具体例

〇障害を理由に・・・

受付の対応を拒否する
同伴者や介護者がいないとお店に入れない
学校の受験や入学を拒否する

障害があるから危険、何かあったら困るなどの抽象的なことは正当な理由にはなりません。

2.合理的配慮の現状と課題

合理的配慮とは国や都道府県・市町村などの役所や会社などの事業者に対して、障害のある人から社会の中にある障壁について対応を必要としている意思が伝えられた時に、可能な限り対応することを求めています。

「合理的配慮」の具体例

〇店の入り口の段差をなくす、スロープを付ける
〇職場の環境を改善する(休憩時間の調整、勤務時間の柔軟な変更)
〇指示や文字の理解が困難な人にイラスト、筆談、タブレットやアプリの使用

以上の配慮が必要な方は、障害手帳をお持ちの方だけでなく、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある方全てが対象です。
合理的配慮の提供が、これまでは、国や地方自治体だけが義務でしたが、今回の改正により民間事業者も義務化されます。
現在の法律では、実際に当事者の方が差別を受けても、相談窓口が分からない、窓口をたらい回しにされ結局解決せずに泣き寝入りしたなどの声もあり課題も多くあります。また、学校でも、児童・生徒・保護者・教職員への理解が十分に足りていない状況にあるようです。また、提供するとなると設備投資などの莫大な予算も必要となってきます。

3.ブルーミング阿倉川SSの取り組み

以前のコラムで紹介しましたが、当法人はガソリンスタンドを運営しております。スタッフ・利用者さんも全く経験のない状態から各方面からの支援と地元のお客様に支えられながら今年の11月で8年目を迎えます。オープン時の利用者さんの作業は掃除・洗車、チラシ折など直接お客様に接客することは少なかったですが、スタンド全員が業務に慣れて余裕が出てきたことにより、領収証のサインを頂く、高齢者の来店者の灯油のポリ缶を車の中まで運ぶ、お客様の要件を職員へ取次などお客様と接する機会も増えたことにより、事業の趣旨に対する理解も浸透してきました。
さて、昨今はガソリンスタンド業界に関わらず、社会全体が慢性的な労働者不足となっている中で、民間事業所に障害者への合理的配慮の提供が義務化されますが、違反があった場合でも、直ちに罰則が課されることはありません。人手不足が続く限り負担の増加が予想される。また、配慮とうい盾を振りかざしてクレームになるケースやSNSで晒されることも考えられます。
当店でも、当初は利用者さんを店頭で積極的に接客することに消極的でした。お客様を待たせる、説明ができないなどクレームが出ることでお客様が減ってしまうのではないかとの不安がありましたが、ダイバーシティプレイスのポスター掲示による啓発活動、従業員が付き添って接客を続けることで理解を深めてきました。また、当店のコンセプトは「親切なガソリンスタンド」となっております。複雑な機械操作が苦手、灯油のポリ缶を運ぶことが大変そうな女性や高齢者など、お困りの方に対して積極的にアプローチを心がけながら、利用者さんと共に活動してきました。その結果、障害者に対する理解も浸透し、お客様にも信頼を得てリピーターに繋がっています。
障害者だけでなく、困っている方に声をかけて、見守る姿勢を従業員が持つことで合理的配慮に対する意識を高く持ち、行動できるようになってきました。

4.まとめ

合理的配慮をCSR(企業の社会的責任)として取り組むことで、地域密着の地盤を固める要素の一つとなることにもなります。また、従業員全員で障害者の目線で社内の課題に向き合うことで、職場環境の改善や障害者雇用のきっかけとなり人手不足が解消するかもしれません。更には、顧客満足度や利益の向上に発展する可能性もあると思われます。
一度、社内で合理的配慮についてみなさんで話し合ってみてはいかがでしょうか?

参考資料:内閣府(合理的配慮のリーフレット)