障がいのある人と共に働く場所
当法人が2016年11月に開所した『ブルーミング阿倉川SS・ぱんカフェBlooming』は、障がいのある人がいきいきと働ける場所を地域につくることを目的として始められました。地域にこのような場所を作ることの意義や障がいのある人と働くなかで気を付けていることをお伝えしたいと思います。
【目次】
1.地域の中で障がいのある人が働ける場所
2.施設ではなく地域で働くということ
3.一緒に働く中で配慮することや心がけ
4.まとめ
1.地域の中で障がいのある人が働ける場所
障がいのある人の働き方として、主に2通りが考えられます。一つ目の方法は、一般企業への就職です。(障がいを企業側へ開示して働く方や開示せずに働く方など、さまざまな方がおられます。)もう一つは、福祉事業所に通所し、一般企業への就職を目指す場合や、継続的な働く場所として利用する場合があります。
当事業所では、職員として雇用されている障がいのある方と福祉サービス利用として当事業所を利用されている方がいらっしゃいます。どちらの方も当事業所での就労を目的とされています。職員として雇用される障がいのある方は、雇用契約を結んだ後、労働基準法に沿って勤務することになります。一方、福祉サービス利用として、当事業所を利用される方は、福祉サービス利用をしている状態となります。(利用者さんと呼ばれています)
利用者さんに対しては、私を含めた職員は、利用者さんが得意なことや困難なことを観察し、個別支援計画に沿って、支援していくことが求められます。一方で、職員として雇用されている障がいのある人に対しては、個別支援計画の作成は行いませんが、その人が働きやすい環境づくりを行う配慮が求められます。一般企業における障がいのある人の雇用の場合と同じです。こうした配慮は、合理的配慮と言われています。合理的配慮[i]は、事業主に、障がいがある人が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置を行うことを意味します。つまり、障がいのある人が働く環境の中で、バリア(働きにくさ)となっていることを取り除き、障がいのある人が働きやすい環境を作っていくということです。こうした配慮によって、障がいのある人がその人の力を活かして、働くことが可能となります。
近年では、障害者雇用促進法[ii]の効果もあり、一般企業における障がいのある人の雇用率も上がっています。しかし、一般企業で働くことができる障がいのある人が限られていることも事実です。そうした中で、福祉施設における働く場を充実させていくことが求められていると感じています。そして、多様な障がいのある方のニーズに合わせられるようにさまざまな仕事を作り出していく必要性があります。これまでに障がいのある方々が働いてきた職種だけでなく、新しい職種にも可能性はたくさんあります。そのため、地域の中で、さまざまな障がいや困難を抱えた人が一人でも多く、その人らしく働けるように働く場所を増やしていきたいと当法人は考えています。障がいの特性によって、スムーズにできないことや時間がかかってしまうことなどもありますが、お客様にご理解をいただきながら、障がいのある人が自分らしく働ける場を作っていくことが法人職員及び就労支援員の役割であると考えています。
2.施設ではなく地域で働くということ
入所施設や通所施設では、普段は、安全面や感染対策などを理由に、利用者家族や職員以外の方が利用する機会は多くはありません。そのため、身近に施設があっても何をやっているところなのか、利用者の方がどのようなお仕事をされているのかを目にすることは、そう多くはないでしょう。しかし、ガソリンスタンドやカフェと言った一般の方に足を運んでいただく事業形態を福祉サービスが行うことによって、実際に障がいのある方がどのようにお仕事をされているのかを地域の方に目にしていただく機会を創り出すことになります。
障がいのある方と関わったことがない方にとっては、そうした機会を通じて、実際に障がいのある方との関わりを身近に感じていただけるのではないかと思います。障がいと一言で言っても、人によってさまざまなので、関わりがすぐに理解につながるとは一概には言えませんが、まずは知ってもらうことから始めることが大切だと感じています。
3.一緒に働く中で配慮することや心がけ
障がいのある人が働く上で、職場や社会が配慮すべきこととして、その方の障がいの特性をしっかりと理解するということが求められます。一人ひとりの性格や気質を理解した上で、障がい特性によって、できないことや苦手なことを把握しておくことが必要になります。またその人が、どのような事を得意としているかを把握しておくことも大変重要になります。そのうえで、その人に合った仕事を作っていくことが求められます。もちろん、一緒に仕事をする中では、支援者側も共に成長することが求められます。成長のプロセスでは、ご本人にとって、経験したことのないことや難しいことにも取り組むことが必要になります。その際に、支援者がどのように配慮すれば、本人が業務を行うことができるようになるかを「本人と一緒に」考えて、乗り越えていくことで、本人も支援者も成長できると感じています。ここでは、必ず本人がどのように感じてるかを周囲に共有してもらうことが大切です。私達支援員は、本人ではないので、本人がどのように感じているのかをすべて汲み取ることは難しいからです。そのため、一人ひとり異なる障がい特性がある中で、その人の感じていることや考えていることに耳を傾ける必要があります。知的障がいがある人の中には、自分の思っていることを言葉にするのが苦手な人もいます。そういった場合には、表情や短い言葉から伝えたいことを職員が汲み取る努力をすることや細かく丁寧にお話を聞いていくことで明らかになることがあります。また視覚的なツールを使うなどしながら、コミュニケーションをとることによって、本人が感じていることを理解することができるようになります。
日々、ガソリンスタンドやカフェの運営をしていると、さまざまな出来事が起こることがあります。しかし、それらの出来事によって、職員の配慮が足りていなかったことに気づかされることがあります。また、仕事が本人には合っていなかったという場合もあります。このようにトライアンドエラーの繰り返しによって、職員も障がいのある人もさまざまな経験をすることを通して、お互いの理解を深め、障がいのある人もない人もみんなが働きやすい環境を作り上げていくことを心がけています。
4.まとめ
障がいのある人が働きやすい環境を整えることは、簡単なことではありません。なぜなら、仕事の内容とその人の障害特性のどちらも理解した上で配慮をすることを決める必要があるからです。配慮する事項を決める際には、本人を中心においた、改善策の提案がなされ、改善策を試してみて難しければ、再度考えていくという個別性が必要になります。
当事業所では、先述した試行錯誤を繰り返しているため、事業所としての成長は、一般企業の成長に比べるとゆっくりになっているかもしれません。しかし、障がいのある方がいきいきと自分らしく働ける場所として継続していくために、確実に一歩ずつ成長していきたいと考えています。
出典:厚生労働省
厚生労働省「障害者雇用促進法(平成20年改正)について」
[i] 平成28年4月(一部公布日又は平成30年4月)より、改正障害者雇用促進法が施行され、雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務とされています。雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮の提供義務)を定めるとともに、障害者の雇用に関する状況に鑑み、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加える等の措置を講ずる。
[ii] 障害者の職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的に定められた法律です。基本的理念、事業主の責務、国及び地方公共団体の責務、厚生労働大臣による障害者雇用対策基本方針・障害者活躍推進計画作成指針、国及び地方公共団体における障害者活躍推進計画の作成義務等が定められています。





