コラム

当法人における新型コロナ感染症対策について

今回のコラムでは、当法人の新型コロナウイルス等感染症対策の取り組みをご紹介させていただきます。

1.はじめに
2.緊急感染症ワーキンググループの取り組み
3.まとめ

1.はじめに

新型コロナウイルスがパンデミックとなって2年以上が経過しようとしています。発生当時は、マスク文化も無く、感染症対策も社会全体としては、今を振り返ればかなり手薄だったとは思いますが、当時はそれが当たり前だったのが考えされられる所ではないでしょうか。
新型コロナウイルスが蔓延する以前の当法人の感染対策を率直に評価しますと、ごく一般的な社会福祉施設という印象は拭えません。常時、マスクは装着していませんでしたし、スタンダードプリコーション(基本的な感染対策の考え方)に則ったPPE(エプロン、手袋などの個人防護具)の活用も十分に行われてはいませんでした。手指消毒用のアルコールも配置していませんでした。当然、定期的にノロウイルスによる感染症の発生は認めており、その都度、対策や改善をしてきてはいたのですが、その甲斐空しく、直近では数十人規模のノロウイルスの感染拡大もありました。また、インフルエンザなどの感染症も職員、利用者を始め爆発的な感染はないにせよ、発症を認めていたことは確かです。

2.緊急感染症対策ワーキンググループの取り組み

昨年4月、当法人では感染症ワーキンググループ(以下、WG)を発足し、管理者と医療従事者、専門職者の構成で法人における感染対策専門のチームを稼働させました。これまでの感染対策の見直しや、新型コロナウイルスの国際的、国内の動向を踏まえ、特に所属する自治体の対応や市中の感染状況を鑑みながら、通所利用やショート利用、作業所の稼働、生活の場の環境整備、ゾーニング、感染時対応の人員や物資の調整を行なってまいりました。時には感染の専門看護師を招き、講習会の実施、また施設設備、対応への助言を仰ぐなどの可能な限りの対応を行ってきました。
WG発足当初、PPEの充実や手指衛生の習慣化はかなり困難を極めるのではないかと、たくさんの危惧もありましたが、今現在では、職員の惜しみない協力もあり、感染時対応への環境づくりが少しずつできてきたと考えております。
その結果といっては過言かもしれませんが、感染対策における多少の成果を得ることができました。例を挙げると、当法人内における、令和3年度のノロウイルスの発生は0件でした。また、インフルエンザの発症も0件でした。新型コロナウイルスの発症は令和3年度4月から令和4年度5月現在まで利用者・職員合わせて11件発生しましたが施設内クラスターが発生することはありませんでした。こうした結果を踏まえ、感染対策の重要性とその価値について改めて思い至る事があります。それは、今現在、感染対策と聞くと自然と新型コロナウイルスに対する取り組みを思い浮かべてしまいますが、本質的にはそうではありません。感染対策は、新型コロナウイルスを含む全ての感染症に対して必要な取り組みであるということです。基本的な感染対策の徹底は新規感染症が認めた際でも応用的に対応することが可能です。当法人で、新型コロナウイルスだけでなく、ノロウイルスやインフルエンザの発生件数が減少したのも基本的な感染対策の実施が起因しているものと考えております。

【当法人における具体的な感染症対策について】

これまで、当法人の感染対策における経緯をお伝えしてきましたので、具体的に当法人における感染症対策を紹介させていただきます。

以下は、当法人が行った感染対策の実施項目です。

感染対策の研修(感染対策の基礎知識、手指衛生、消毒とPPE装着手順の実技)の実施
コロナ病棟での勤務経験もある看護師と当法人所属のPTとで協力し、研修の計画、実施を複数回に分けて全職員に実施しました。また、初めての具体的な感染症に関する研修でしたので感染症委員の方には振り返りとしての二回目の研修を行うなどし、知識と技術の定着を促すよう努めました。

職員一人一人にゴーグルと手指消毒剤の支給
物品を確保しても、実際に使用しなければ感染対策は実施できません。当法人では、在籍された職員(正規、パート含む)一人一人に飛沫予防のためのゴーグルと手指消毒用の携帯用アルコール製剤を支給しています。一人一人が主体的に感染対策が行なえる様、環境整備にも尽力しました。

エプロン、手袋の配備
感染対策の基本であるディスポーザブル手袋、エプロンですが、なかなか福祉施設では十全に配備できることが難しい物品です。特に重度の知的障碍者施設では利用者方の異食行動も含め、物品が利用者ご本人に危害を加える恐れがあるため、物の配置に困難性が伴うためです。しかし、感染対策の重要性を改めて認識しなおし、可能な範囲で導線を考慮し口腔ケア、オムツ交換、排泄物処理の際に利用できるよう各現場で工夫し使用していただいております。

感染症WGの定期開催
施設管理者、専門職者で構成されたワーキンググループを定期的に開催し、感染症対策の方針やルール作りを行なっております。法人全体で統一された感染対策や外部対応を行うために、最新の感染症情報をもとに、協議し幹部会等で検討していただけるよう情報を整理するために活動を行なっております。

LINE WORKSを利用した情報共有
昨今、情報の共有と発信はその速さと記録の保持が重要となってきました。いつ、だれが、どのようにして、どこで、何が起こったのかを法人内の管理者、統括リーダー職員などが共有できるようSNSツールを実験的に採用し、運用しております。まだまだ、情報の整理や共有方法について課題は残りますが、迅速な対応に寄与してると考えております。

また、現場レベルでも色々と取り組みがなされており、例えば、一部の事業所では感染対策対応時の引継ぎ書式を作成し、実施した支援や感染対策を手順書にまとめ、マニュアルとしてファイリングし管理している事例もあります。
現場でレッドゾーンが発生した際は、自分たちのPPE装着技術や、実際に新型コロナウイルス陽性者に対応すること、レッドゾーンに入室することなど多くの不安があると訴えがありました。それまで、数回の研修や、日常の口腔ケアでPPEを装着するのみであった状態からガウン、フェイスシールドと完全防備で実際に汚染された場でのケアには相当のストレスがあったと容易に想像できます。しかし、現場の職員達は協力しあい、かつ支援環境の改善を進めながら、レッドゾーン対応を乗り越えていただきました。
新型コロナウイルス陽性者の対応が終結後も、濃厚接触者の隔離はありましたが、今現在(令和4年6月1日)、レッドゾーンの設定は行われる状況にはならずに済んでいますが、いつどうなるとも限りません。また、職員自身もいつどこで新型コロナウイルスに感染するかもわかりません。そのため、当法人の職員1人1人ができる感染対策を職場でもプライベートでも実践していただいている結果が、現在の法人の感染状況に繋がっていると考えております。短発で陽性者が発生したとしても、そこから感染を広げる事無く、また、隔離状態であっても利用者のQOLが低下することなく、食事提供の工夫やPPE装着での支援の提供をしっかりと行い、持続的なサービスの実現ができていることに、法人と職員一人一人、利用者本人様からのご協力の賜物であると考えております。

3.まとめ

さて、新型コロナウイルスの流行状況も随分と変化をしてきてまいりました。ワクチン接種も3回目が徐々に行き渡り、今年のGWは2年ぶりの制限のない状況での大型連休となりました。また、マスク着用についても、屋外で2m以上離れていれば必ずしもつける必要がないという見解を出しつつも、政府としてはマスク着用を緩和することは現実的では無いという見方を示しています。当法人にとって、利用者のマスク装着はかなり難しい課題です。現時点では、入所施設利用者ではほぼマスク装着の協力は得られていません。通所事業所やGHではマスク装着について理解していただき協力を得られていることがほとんどです。しかし、一方で使用済みのマスクを何度も再使用したり、何枚も部屋の放置してしまう状況も見られます。都度、職員にて声かけを行い、出来る範囲の中で利用者様方には感染対策の協力を得ているのが実情です。よって、当法人では感染対策の指針の一つとしてリスク低減の観点から可能なことがらを実施していくこととしました。マスク装着できないのであれば、周囲が飛沫予防のレベルを引き上げるという考え方の下、常時、職員がゴーグルを装着するようにすることが一つ。事業所によっては食事のタイミングをずらし、パーティションなどを用いて飛沫暴露を軽減するなど工夫を凝らしてきました。こうした習慣を続けて一年が経ち、利用者様方も環境の変化に適応することができてきました。
今後も、世界情勢、国内の情勢とを十分に鑑みながら利用者様方が安全な生活を送れるよう尽力していきたいと思います。