コラム

福祉従事者必見!おすすめ映画について

映画をよく観ますでしょうか?映画のテーマとして「福祉」や「障害」「社会問題」を扱った映画が沢山制作されています。少し古いですが有名な作品としては、ダスティンホフマンとトムクルーズが出演していた「レインマン」などがあります。今回は福祉従事者の方は必見!!それ以外の方でも心温まるストーリーの映画が好きな方にはおすすめの映画を1本紹介したいと思います。

目次
1.おすすめ映画との出会い
2.おすすめ映画のあらすじ
3.映画に描かれたこと
4.まとめ

1.おすすめ映画との出会い

ある日の午前私が運転する車のカーラジオからCBCラジオの人気番組「つボイノリオの聞けば聞くほど」が流れていました。番組コーナー内でパーソナリティーのつぼいのりをさんがご自身が鑑賞された映画の紹介をされていました。その作品が今回おすすめする「梅切らぬバカ」(映画『梅切らぬバカ』オフィシャルサイト)という作品です。非常に興味を持った作品でしたが近所では上映されておらず(東海地方では名古屋のミニシアター1館だけの上映でした)、コロナ禍ということもあり鑑賞することはかないませんでした。ある日某動画配信サービスを検索していた所、作品が配信されていることを知り早速鑑賞しました。

2.おすすめ映画のあらすじ

ある街の古びた一軒家、庭には枝が道路に大きくはみ出した梅の木が1本生えています。そこに住む占いを生業にしている年老いた母、珠子(加賀まりこ)と障害を持つ息子、チューさんこと忠男(塚地武雅)。息子が50歳を迎えたある日「このままでは親子共倒れになる」と思った母は息子が通っている作業所が運営するグループホームに入居させようと考えました。映画はこの親子を中心に隣に引っ越してきた家族との交流、グループホームへの入居、住民トラブル、占いに来る人々、街にある乗馬クラブでの出来事などのストーリーが展開していきます。タイトルになった「梅切らぬ馬鹿」とは・・・そして親子に訪れる結末は・・・。

3.映画に描かれたこと

今から書くことは本作の主題ではなく要素として描かれていると私は思います。ただ、本作を通じて現代日本社会が抱える問題について考えるきっかけにはなるのではないかと思います。

一つ目は、「障害について」です。ドランクドラゴンの塚地武雅さんが演じるチューさんは知的障害(「知的障害とは」厚生労働省e-ヘルスネット)と自閉症スペクトラム障害(「自閉症スペクトラム障害とは」厚生労働省みんなのメンタルヘルス)を持っているようです。(作中では明言はされていません。)チューさんは朝起きる時間、食事を取る時間、トイレに行く時間も決まっています。「〇時〇分です。〇時〇分です。」と言い、決まった時間に決まった行動をされます。これは自閉症スペクトラム障害の特性の一つです。私どもの施設でも決まった時間にならないとトイレができない方や予定が変更になると不安になりパニックを起こす方などがみえます。チューさんがグループホームに入居した際は、他の入居者の方が食事を待っていても家で食事をしていた時間になると一人食事を始めてしまいます。このような特性を持った方に対しては時間や手順を分かりやすく示すこと等でご本人の不安や周りに合わせた生活を送っていただくことができます。(LITARICジュニア「自閉症とは」

二つ目は、「高齢世帯の問題」です。近年医学の発達や研究によって知的障害者の平均寿命も延びてきています。ある海外の研究では1930年代では18.5歳、1970年代では59歳、1990年代では66歳というデータがあります。チューさんは50歳、母親も80歳。チューさんが通う作業所が運営するグループホームへの入居をすすめられたこともありますが、これまでは何とか二人で生活をしてきました。チューさんが50歳を迎え腰痛を発症、母親も体力が落ち将来に不安を感じ始めます。チューさんは初めてのグループホームへの入居に向けて体験をしますが慣れない場所や日課に戸惑いパニックを起こします。このように障害をお持ちの子供を家庭で親だけが養育しているケースは実際あります。将来別の場所で生活を送る際に自分の家ではない所で寝泊まりをする体験をすることでスムーズな移行につながります。そういった目的で使えるサービスに私どもが行っている「短期入所(ショートステイ)サービス」(当法人ホームページ住まいの場についてワムムネット「短期入所(ショートステイ)」があります。また、映画では描かれていませんが社会問題として「8050(ハチマルゴーマル)問題」というものがあります。長期間に渡って引きこもっていた子供とそれを支えてきた親が高齢化することで経済的、精神的に行き詰ってしまうというものです。(tayorina「8050問題」の本当の原因とは?親子共倒れの悲劇を生まないためにできること

三つ目が「共生社会の実現に向けて」です。チューさんは動物が大好き。毎日通う作業所の道中にある乗馬クラブに立ち寄り馬を眺めるのが大好きです。馬と目が合うと思わず大きな声を出してしまいます。それで馬が驚いてしまうため乗馬クラブの人が迷惑に思っています。その乗馬クラブも何度か馬を敷地外に逃してしまい近隣から苦情を受けています。また、チューさんが入居したグループホームには大きな声を出す人や急に人に近づく人が居るため近隣住人はグループホームの運営継続に対する反対運動を行います。その反対運動の参加者には乗馬クラブのオーナーも。グループホームを運営する事業所は住民説明会を開催したりトラブルが起こったら謝罪をしたりしていますが・・・。誰もが安心して暮らせる地域を実現することはとても難しいと感じます。ただ人は誰しも他者とつながり生きていく生き物だと思います。その中で大なり小なり人に迷惑をかけてしまうことはあります。一人ひとりが生きがいを持ち、手を取り合って生きていける社会の実現には相互理解が必要だと思います。私どももコロナ禍以前は地域理解につながる活動の一環として「タウンミーティング」を定期的に開催していました。(コラム「タウンミーティング」)(厚生労働省「地域共生社会のポータルサイト」)

4.まとめ

ネタバレになりますので映画の結末は書きませんが他の方のレビューを見ると結論に関して賛否両論あるようです。(映画.comレビュー)福祉従事者としても「支援者としてはこうなったら良かったな」と思う方もみえるかもしれません。個人的には、まず主演である加賀まりこさんと塚地武雅さんを始めとする出演者の役者さんの演技の素晴らしさに感動しました。(ミニシアターで上映する作品とは思えない豪華なキャストです。)加賀まりこさんの飾らない母親でありながら愛情の深さを感じとても深みがある母親像を演じてみえると思いました。塚地武雅さんは今やお笑い芸人の枠を超えて観ている人が愛おしく思うチューさんというキャラクターを見事に演じきってみえます。その上で、この作品は「映画的なハッピーエンド」や「社会問題を切る」といった印象は無く、日本社会で生きる一人ひとりの人間ドラマが描かれており、福祉従事者にとってはより身近に感じる世界が広がっていると思います。そこには解決したくてもなかなか解決できないことや理解し合えないことなどが存在しながらも悩みながら日々を過ごす登場人物に温まる気持ちにさせられるでしょう。監督のインタビューでタイトルに込めた思いとして「不要な枝は切らなきゃ駄目だというけれど、結局何が不要なのか、現実を梅の木に置き換えると、分からなくなっていく。人と関わっていく難しさに悩み、間違って切り落としてしまう枝もあると思います。そんな失敗や、よい方向に向かっていくプロセスを感じ取ってもらいたいです。」と話されています。上映時間は1時間17分と短い映画ですので配信サービスやレンタルビデオなどで鑑賞されてはいかがでしょうか?私どもの職場でも同じような心温まる出来事がありますのでご興味ある方はご連絡お待ちしております。(四日市福祉会採用情報