コラム

SDGsへの取り組みで、福祉は何を生み出せるのか

「SDGs、持続可能な未来(開発)のためのアジェンダ」への取組で社会福祉、障害福祉サービスは、何を生み出せるのでしょうか。
虹色に鮮やかな17のマークが近年、認知されるようになりましたが、そのSDGsの目標と福祉サービスへの関連性はどのように考えるべきでしょうか?そしてアジェンダとは?日本における2016年の閣議決定やアクションプランの策定から、ますます私達の身近に感じられるようになったSDGsですが、それでは日々の仕事の中で具体的にどのように取り組むことで、目標に近づくことができるのでしょうか?また絶対的な参加型と言われるこのSDGsに参加していくと言う意義を見つけることはできるのでしょうか?

目次

1.そもそもSDGsって何だろう。
2.今、SDGsな理由は?
3.今の自分にどう結びつけるものなのか?
4.まとめ

1.そもそもSDGsって何だろう。

もう既によくご存知の方も多いとは思いますが、復習も兼ねてSDGsのスタートからの概要をまとめてみます。国連で2000年に策定された『ミレニアム開発目標MDGs』から、様々な会議・条約の集大成として2015年に国連サミットで採択されたものがSDGsです。このSDGsを発案したのは2016年にノーベル平和賞を受賞したファン・マヌエル・サントス大統領を擁する南米・コロンビア共和国政府だということはあまり知られていないようです。話は少し逸れますが、サントス大統領は左翼ゲリラ・コロンビア革命軍と(FARC)と4年間交渉を重ねた末、停戦合意に達し50年余り続いた内戦を終わらせたことを評価されノーベル平和賞を受賞されました。そしてこの平和賞について当時の委員長が「コロンビア国民を称えるものだ」とも言われています。コロンビアが「内戦・誘拐・麻薬の国」という悪いイメージから脱却し中南米の「次の時代」に向けた中でSDGsは沈思熟考され提案されました。

『誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現』を目的に2030年を目途に17の大きな(開発)目標と169の具体的なターゲットを定めています。重要なことは、「誰一人取り残さない」ことであり、地域や国の実情・違いを考慮に入れ2030年に完全実施を目標に全世界において休みなく取り組む参加型だということ。そしてこの目標は経済、社会、環境の3つの側面をもつものだとされています。これは、世界・国家レベルの取り組みから、企業・地方自治体・個人など全てのステークホルダー、構成組織がみな積極的に参加し活動を促進する必要があります。(参加型)そして人々を中心に据えたアジェンダであり、誰一人取り残さない、人々の人々による人々のためのものであり、結論『人類と地球の未来は我々の手の中にある』という言葉でまとめられています。何と大きい目標なのでしょう!

2.今、SDGsな理由は?

この目標が策定されたのは、もともとの2000年のミレニアムMDGsから行けば20年ほど前という事になりますが、世界がこのまま自分勝手に進んで生産や消費を続けて行けば、いつかは地球が終わってしまうのではないかと言う危機感とあらゆる地域で未解決な様様な人権に関する課題を多くの人が共有するようになり、前述のコロンビアからの提案もあり世界レベルのテーブルで話し合われるうち結論、2015年に今のSDGsの形で策定されました。一方で日本の福祉は皆さんご周知の通り、スタートは救貧政策から。戦前どころか遡れば本当に古来からの日本の福祉の歴史がありそれを考えればこの20年の開発目標は今更ながらと考える福祉関係者の方も多いと考えます。2年前のコロナ禍以前までは福祉でもやって来た事じゃないかと。しかし、今、コロナ禍により世界中で重層的な課題が存在し、経済、医療、人的不足と社会は逼迫し地球規模の課題解決に向けて、この大きな目標を何が何でも世界中で取り組んで「こんな未来にして行こう。」と、そして「誰一人取り残さない。」休むことなく継続していくことで世界中が達成する具体的な目標がこのようにあることで、先の見えないトンネルから抜け出す原動力となるのではないか?と。心を一つに、同じ目標を持って取り組むことの大切さを実感することができます。

3.今の自分にどう結びつけるものなのか?

SDGsの17の目標(ゴール)は、社会を動かすような大きなものもありますが、よくよく見ると前述しましたが、私達福祉に携わる人間がやって来たこともいくつかあります。外務省のホームページにも、詳しい説明がありますので文末のサイトでご覧ください。

その前文には、「誰一人取り残さない」(Leave no one behind)と言う理念が掲げられています。私はやり遂げるのは難しいことではありますが、とてもわかり易い明解な言葉だと感じました。また重要な要素として5つのPも掲げています。

人間 eaple
地球 lanet
繁栄 rosperity
平和 eace
パートナーシップ artnership

そして前述した3つの側面として経済、社会、環境をあげ、調和させなければならないとしています。この5つのも3つの側面も福祉の実践において深く関連付けることのできる事柄です。まさに、「共生社会の世界的な実現」と読むことができると考えています。
これらの目標は社会福祉法人の事業計画、基本方針、また全国社会福祉法人経営者協議会の事業運営にも関連付けされ言及されています。特に次の3つの目標は福祉の現場にそのまま当てはまる目標です。当法人の事業計画にも一昨年に取り組み目標と定め、また法人理念の1つ目「周囲を大切に思い理解に努める」はSDGsの5つのPと持続可能な社会の実現に通じるものと理解しています。

目標1.あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
目標3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。
目標8.包摂的かつ持続可能な経済成長およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセントワーク~decent work)

4.まとめ

今や、既にトレンド入りしているSDGsですが、カフェのストロー、テイクアウト用のカップにまで持続可能な社会の実現のために素材の変更が為されているのはご承知の通りと思います。各国、またそれぞれの立場や状況を踏まえた差別化の中で実践を継続していくという事。この決定に対して貢献することはあっても侵害することのないようにするというのは、まさに福祉現場における実践に落とし込める概念であると考えられます。一人ひとりの状況に応じて、その人の未来や希望の実現のために本人を中心とした、本人も含めた周囲が連携して取り組んでいく。それは人々に権利侵害を起こさせない多くの人の連携・パートナーシップに基づくことで実現されると考えられます。日々の福祉サービスの現場にそぐわないような言葉もあるとは思いますが、この機会にSDGsを紐解き一人ひとりは小さな存在ではありますが、まさしくこの地球を構成する一人ひとりの要素が立場に応じた取り組みを休みなく継続することが大切だと言われています。この開発目標は普遍的で不可分であり相互に関連していることが強調されています。一人ひとりの取り組みで「こうあって欲しい目指すべき未来像」に近づいて行くことが自分を含む全ての人のこんな世界が素晴らしいと言う未来・ゴールに到達していくのではないでしょうか。誰一人取り残さないということは、みんなが幸せになれるように取り組もうという決意の現れだと考えています。『人類と地球の未来は我々の手の中にある』ということです。
最後に、興味深いSDGsを学ぶためのアクティビティや教材をご紹介したいと思います。このコラム作成に使用した「基本解説…」の巻末にも3つ取り上げられていますが、JICAの地球ひろばのサイトを開くと「先生・生徒のお役立ちひろば」にいくつかの教材、映像や印刷可能なもの、実践報告が掲載されています。より身近にSDGsを感じることができたり、実際に教材を作ることもできます。何となく知ってるのではなく、参加型のSDGsに皆さん一人ひとりの立場で参加してみてはいかがでしょうか。

もっと詳しく⇒
下記、外務省サイト
アジェンダとは⇒Wikipediaより
ノーベル平和賞・コロンビアサントス大統領
四日市福祉会 事業計画(PDF)
JICA地球ひろば SDGsを学べる教材

出典:
一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク「基本解説そうだったのか。SDGs」:社会福祉法人 全国社会福祉協議会
「月間福祉 10月号 SDGsは福祉に何をもたらすか。」:全国社会福祉法人経営者協議会
令和2年度事業報告書