コラム

障がい者施設で働く看護師について

私は四日市福祉会で看護師として従事しております。当法人に入職する前は医療機関や特別養護老人ホームで勤務しておりました。さて、施設での看護師は一体どんなことをしているのか?医療行為はあるのだろうか?と、気になっている方がいると思います。このコラムでは知的障害や施設のことに触れながら障がい者施設で働く看護師の業務内容や役割について簡単ではありますがお話させていただきます。

【目次】

1.障がい者施設について
2.障がい者施設での看護師の業務と役割
3.まとめ

1.障がい者施設について

はじめに、障がい者施設とは、知的障害のある方たちが日常生活を過ごしながら生活習慣を確立していくための施設を指します。知的障害者について厚生労働省の定義によると「知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。知的機能や適応機能に基づいて判断され、重症度により軽度、中等度、重度、最重度に分類されます。様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援も欠かせない発達障害のひとつです。」と述べられています。
知的障害は知的指数(IQ)が70以下を目安にIQの値によって障害の重さが分類されるのですが、施設入所されている多くの方がIQ50以下と言われています。ちなみに、IQ36~50の適応能力は、平仮名がある程度書くことができ、生活における自分のことは繰り返しの反復、指導をすれば一人で行うことが可能です。
当法人の入所施設では支援の程度や自由度に応じて大きく3つの施設に分かれており、障害の種類や度合いによって、終日生活支援が必要な方もいれば、日中は作業場で作業をしに行かれたり一般就労されている方もおられます。
私はそのなかで軽度~重度で比較的自由度の高い利用者の方たちの健康面のサポートをさせていただいております。

2.障がい者施設での看護師の業務と役割

施設での看護業務は、定期的な訪問による健康チェック、バイタルチェック、服薬管理、訪問診療の補助、予防接種の補助、医療機関受診の付き添いなどになります。そのなかで最も重要なのが、利用者の方たちの健康管理になります。看護師としての基本的なスキルや吸痰や胃ろうなどの医療知識に加え、病気とは異なる「障害」についての知識も備えておくと安心です。
利用者のなかには、自ら体調不良を訴えることが難しい方やコミュケーションがとりづらい方、上手く言葉がでない方など様々で、例えば、胃に痛みがあったとして訴えられる内容が「お腹が気持ち悪い」などといった正しい部位や症状を伝えることが出来ない場合もあります。そのため、日頃から利用者一人ひとりの特性、持病、コミュニケーションのとり方を理解しておく必要があります。そして、些細な変化も見逃さないようフィジカルアセスメント能力を発揮することがとても重要です。施設には医師が常駐していないので健康管理していく上で外部受診が必要かの判断や怪我に対する処置などを求められることがありますが、なるべく一人で抱え込まないよう、かかりつけ医師や多職種と相談して決定するようにしています。医療行為が少ないため、医療においてのスキルアップは難しい面がありますが、「障害福祉」という違う分野を学ぶには適した環境だと思います。また、利用者とのコミュニケーションがとりやすいので、気持ちにゆとりを持った看護ができると思います。

3.まとめ

高齢化が進んでいる昨今、知的障がい者も入所期間が長くになるにつれ高齢化が進んでおり、高血圧や脳梗塞などを患うケースも少なくありません。それに伴い、医療ケアが必要になる方も増えてくることが予想され看護師の需要がさらに求められると思います。今後の課題もありますが、利用者の純粋無垢な心と笑顔に日々癒しと元気をもらっています。引き続き、利用者がより安心、安全に暮らせるよう見守りながら共に成長していけたらと思います。
障がい者施設で働くことにご興味を持たれた看護師さん、ぜひ一緒に「看護」の幅を広げてみませんか?

【参考、引用文献】
有馬正高「知的障害のことがよくわかる本」、講談社
県立障害福祉施設看護師会「施設で生活をする知的障碍児者の看護」