コラム

栄養士にとって栄養ケア・マネジメントとは

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障害者及び障害児(以下「障害者等」という。)が自立して快適な日常生活を営み、尊厳ある自己実現をめざすためには、障害者等一人ひとりの健康・栄養状態の維持や食生活の質の向上を図ることが不可欠であり、これまで個別の障害者等の健康・栄養状態に着目した栄養ケア・マネジメントの実施を栄養マネジメント加算として評価している。
(厚生労働省通知 障障発0406第1号より抜粋)

目次

1.栄養ケアの目標
2.栄養マネジメント加算
3.栄養ケア・マネジメントの手順
4.まとめ

1.栄養ケアの目標

・生活の質の向上(食事、食生活)
・健康の維持増進
・疾病の改善&重症化の予防

栄養ケアで目指すことはいくつかあると思いますが、上記の3点は代表的なものです。

2.栄養マネジメント加算

介護保険施設では廃止されましたが、障害者支援施設では栄養マネジメント加算があります。
加算取得に向けた準備は、体制づくりや加算の申請等あります。

誰が担当するのか。どこに書類やデータを保管するのか。同意はどのように得るのか。情報はどのようにして共有するのか。いつから加算を算定し、いつから情報収集や準備をすれば間に合うのかなどあります。準備は施設の人員や管理栄養士の経験や知識によって分担が決まると思うので、施設によって異なります。
このコラムでは、施設の管理栄養士が最低限行わなければならない栄養ケア・マネジメントの手順を説明します。

3.栄養ケア・マネジメントの手順

①栄養スクリーニング・・・栄養状態の把握
②栄養アセスメント・・・栄養に関する問題の把握と原因の理解
③栄養ケア計画の作成・・・目標の設定・問題解決するのは管理栄養士一人だけではない
④説明・同意・・・利用者本人やその家族に対して行う
⑤栄養ケアの実施、チェック・・・多職種共同
⑥モニタリング・・・総合的な評価判定
以降③→⑥の手順を繰り返す

・スクリーニングとは、BMIや体重変化率、食事摂取量、栄養補給法、褥瘡の有無、栄養補助食品の有無から栄養状態の把握を行う事です。
BMIとは、 [体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される値。肥満や低体重(やせ)の判定に用いるもの。
・アセスメントとは、スクリーニングの内容に追加して、本人の意向、食生活の状況や課題、他職種からの意見、疾病や褥瘡の状態を把握し、食事についての課題や改善すべき点を見つけます。
・栄養ケア計画書では、アセスメントの内容から本人の意向を実現するために具体的な目標を設定します。目標を達成するためにどのような支援を誰が、どれくらいの頻度で行うのか記載します。栄養ケア計画は施設の支援計画と一体的に考えます。
・説明・同意では、作成した計画を説明し、納得してもらい同意の証として、サインをもらいます。同意を得た日から加算が算定できます。
・栄養ケアの実施、チェックでは、目標達成のための支援内容を実施した上で、記録を残します。この記録は重要で、次のモニタリングに使用するだけでなく、栄養ケア計画通りに、支援を実施している。という記録にもなります。
・モニタリングでは、栄養ケア計画による支援の内容と方法が適切だったのか、効果があったのか、目標達成度や改善状況、総合的な評価から栄養ケア計画の継続や修正、または終了の判断をします。

目標があいまいだと、目標達成度が判断できなくなるため、目標を明確に(具体的な目標を設定)します。個人的には数値目標を掲げることで、評価しやすくなると思います。体重の変化や食事摂取量、血液検査の数値が分かりやすいと思います。
数値で示すと、利用者や家族、他職種にも分かりやすいので、説明しやすく、次のプランの目標も立てやすくなります。

4.まとめ

ポイントを押さえて仕事をし、記録を残すことはもちろん重要ですが、利用者のために栄養に関わる職員がチームとなって、栄養支援を継続することが大切です。
同じ栄養支援をしても、結果が良くなる方もいれば、改善されない方もいます。改善が認められなかったとしても、説明した手順通り栄養ケア・マネジメントを実施すれば、計画の修正等をするはずなので、個人に合わせた栄養支援になっていきます。つまり、利用者の数だけ栄養ケア計画書ができるのです。
はじめのうちは、情報が少ないので、似たようなプランが出来てくるかもしれません。しかし、時間とともに得られる情報が増えると、栄養支援の選択肢が増えます。試行錯誤しながらも栄養支援を継続的に行うことが、一人ひとりの健康状態や栄養状態の維持や食生活の質の向上を図ることとなり、利用者が自立して快適な日常生活を営み、尊厳ある自己実現を目指すことに繋がると思っています。

<再掲>
障害者及び障害児(以下「障害者等」という。)が自立して快適な日常生活を営み、尊厳ある自己実現をめざすためには、障害者等一人ひとりの健康・栄養状態の維持や食生活の質の向上を図ることが不可欠であり、これまで個別の障害者等の健康・栄養状態に着目した栄養ケア・マネジメントの実施を栄養マネジメント加算として評価している。

参考・引用:厚生労働省通知 障障発0406第1号