コラム

障がい者の虐待防止に向けてvol.2

前回に続き、障がい者虐待というテーマでコラムを更新させてもらいます。
今回は実際に虐待が起きた施設を見学したり、職員からお話を聞かせてもらったことなどをもとにお話させてもらいます。

目次:
1.実際、虐待が起きた施設でのお話
2.虐待が起こる背景
3.その後の取り組み
4.第二回目コラムまとめ

1. 実際、虐待が起きた施設のお話

【施設で実際に起きた虐待事件】

  • 〇〇県の施設における虐待

「障がい者の脚に鎖、歯を折る、虐待10件、施設に改善指導」
〇〇市の社会福祉法人〇〇が運営する知的障がい者福祉施設で前園長らが入所者を虐待していた問題で、〇〇県は施設に対する特別監査で約6年間に10件の虐待があったとし、運営改善を指導した。
県によると19〇〇年〇月、男性入所者(当時19歳)が男性職員の顔、頭を3回殴ったため、その職員が拳で殴り返し前歯1本を折る。
20〇〇年、〇月には園長が無断外出を繰り返した男性入所者(当時30歳)の脚を鎖で一週間ほど縛るなど、10件の虐待があったとのこと。

・〇〇県で起きた虐待・不適切支援の一部
「お前、はよせえ!」ある職員は利用者に対し掃除時間も男性職員が怒鳴り散らしていたのを見た。
「からかい」もあった。「〇〇さん、家に帰られへんね。」「もう絶交や!」と突き放す。
「いやや!帰る!」「仲良くして!」と必死にすがる様子を見て面白がっていた。
(自分もしていた、という職員は「正しい支援の方法が分からず、本当に申し訳なかった」と悔やむ)
・他の利用者を叩いた罰とのことで、頬が腫れあがるまで平手をしていた職員の姿を見た。
(その職員に注意すると、「支援の難しさが分かっていない」と非難された)                               などがありました。

2. 虐待が起きる背景

この2か所の事業所の職員にお話を聞かせてもらい、職員それぞれの思いがあることに気づかされました。

〇職員の経験不足と未熟さ
・開所当時の職員は新卒の職員が大半を占め、障がい者の支援を経験した職員も少なく、専門的な支援や取り組みを示唆できる職員が不在であった。
・問題行動のある方に対し対応方法が解らず、優しい言葉かけでは問題行動の制止が効かないなかで「怒る・しつける必要がある」という考えが生まれた。
・正しい理論や裏付けのある支援方法を教えることができる職員が不在であったので、間違った支援は引き継がれていく。

〇利用者は職員を見て行動を起こすという考え方
・利用者に「問題行動を起こさせるのは職員のせいである」という雰囲気は職員の焦りを生み、支援方法の解らない職員は先輩職員の支援方法を見本とせざるを得ない状況があった。
・職員間でも見ていないように装い、見ている「無関心の関心」の状態があり、余計に職員も孤独に陥り、その反動は利用者に対し抑圧的な支援となる。そしてその支援がうまくいくと、それが正しい支援と思い込む。

〇施設内で注意しあえない環境
・体罰や「これって?」と思う支援について注意ができない状況であった。一番の理由は自分も多かれ少なかれ、体罰やそれらに近いことを行っていたから・・。
・力で抑えることによって問題行動が減っていく中、力での支援が容認される雰囲気となり、注意しにくい環境であった。
・管理者自体の意識の低さ
などがありました。

3.その後の取り組み

最後にどのように立て直していったのかも聞くことができました。一部を掲載したいと思います。
・話し合いを重ね、自分たちで考えていく
新しい体制に変わった当時、確定されていることはほとんどなく、支援者は戸惑いもあった。混乱した中でとりあえず話し合いを重ねていくことによって、決まったことから初めてみた。まず「何かをやってみよう」という気持ちからスタートだった。
そして「自分たちでもできた!」ということはとても大切なことであった。
「視覚的なアプローチ」など一つひとつ自分たちで考え、取り組み成功体験を積めたことは職員の自信につながり、仕事の意欲向上にもつながった

4. 第二回コラムまとめ

今回は実際、虐待があった施設を見せてもらい、虐待をしてしまった職員の気持ち、あるいは周りの職員の気持ちを改めて教えられました。この「福祉」の仕事に入職される方は、はじめから障がい者を「いじめてやろう」とか「傷つけてやろう」という思いで福祉の世界に入ってくる人たちは少ないと思います。
・日々の業務のストレス
・職員との人間関係などが・・・
・利用者にどのように接したらよいのか分からず・・・
・先輩職員もそのようにしており、言い出しにくく、また反論したら今後の人間関係に影響してくるし・・・
など日々の少しずつの蓄積が、ある日利用者に向いてしまうこともあったと思います。
このようにすべてを「障がい者虐待」=「悪い」とひとくくりにするのではなく、「どうしたらよいのか分からず、つい手を出してしまった」「だれにも相談できず・・」など職員へのサポートという部分も大きいのかもしれません。身近に困っている職員も多くいると思います。皆さんで今、できることを行うことができたら少しずつ、障がいを持たれた方も生きやすい世の中になるのかもしれません。